日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

私の音楽史(3):ベース弾きの神様


シリーズ振り返れ私の半生(?)ということで始めた私の音楽史。その第三弾は、趣味のベース弾きである当方が、甚く影響を受けたベーシスト達について語ってみたい。思い返すと、私が趣味のベース弾き街道に足を踏み入れたのは、忘れもしない高校一年の秋:文化祭の打ち上げ(飲み会)でほろ酔い気分で適当な返事をしてしまったことに始まる。


そもそも当時の私は、高校入ったらシンセを買って、独りで宅録的なこと*1をやるべく、せっせとお金を貯めていたのであった。ところが、その飲み会の席で、文化祭の興奮そのままに「バンドやるからベースやってくれ」っと当時の親友にセガマレて、嫌とは言えずに「ほろ酔い気分でろけんろー」って按配で「まかせとけ」だなんて返事、しちゃったのでした。ところが、当時の当方「ベースの音」がなんなのかすらよく分かってなくて、それになんだか地味だし、レコード聴いても何やってんのかわからんし「ああ失敗したぁ、貯金が泣いている」って感じで、己の「ほろ酔い加減でほろっほー」な振る舞いをずーんと反省するハメになったのである。


まぁ、そうはいっても後には引けずで、結局ベースを購入したのだが、なけなしの貯金を叩いたその時点で、当時からヒネクレ者だった当方は、然らばベースでベースらしからぬことをやって、目立ちたがり屋でマッチョ思想なギター弾きども*2に一泡吹かせてやる、って具合で、ジャコパスやスタンリー・クラーク等のフュージョン系、ビリー・シーン(タラス時代)やスティーブ・ハリス(アイアンメイデン)等のメタル系、そしてゲディ・リー(ラッシュ)やクリス・スクワイア(イエス)等のプログレ系と、とにかくバカテクベーシストのレコードをレンタルしてきて、とにかく練習に次ぐ練習って感じで「ヒネクレ野郎の一念石をも穿つ」って具合に、気が付くと相当なテクを身に付けていたのでした。

そして、その頃になると、ベース弾くことが不思議と楽しくなっていて、単なる「ベベベベベベベベ」っていう8分弾きでも、そこでの強弱のつけ方やその音色の作り方一つでバンドのサウンド全体が物凄く変わることに気が付いて、テクよりもグルーブだなっス、って方向にシフトしていったのでした。その過程で、下記のクライブ師匠とデヴィット師匠にはかなり影響を受けました。また、他方で斯様な「グルーブ」とは反対方向で、リズムキープやルート音の演奏という「本来的な役割」の破壊によるアヴァンギャルドな方向にも転がっていくのですが、この辺りは当時愛聴していたノイズ系の音楽、或いはキング・クリムゾンの「太陽と戦慄」でのジョン・ウエットン師匠の演奏*3の影響も大蟻でした。と言うわけで下記にて選んでみましたのが、僕のベースの神様5人衆なのである。


ところで僕は、いまだかって一度たりとも自分が好きなジャンルの音楽(例:ネオアコ)でベースを弾いてないという現実がありやして・・・まぁ、その辺はバンド内の力関係とか、同好の士がいなかったのでショウガナク雇われベース弾きに身を窶すとか、そんなこんなで「こにゃにちわ」という哀れさ加減なのでした。そして、今ではベースはケースの中で冬眠状態、かつての疾走する若さのようなテクニックは完全消滅、あれだけ練習したグルーブ地獄も筋力不足で1分引き続けると右手が痙攣だなんて、情けない有様・・・そして、ベース弾きとなることが運命つけられた「あの秋」から既に20年という時の流れを前に、為す術なく立ち尽くす僕なのであった。。。


John Wetton 「U.K / U.K」

7〜8曲目の黒人ファンクともフュージョンバカテクとも異なる、変拍子の隙間を縦横無尽に跳ね回る異次元グルーブが素晴らしい、ウエットン先生最高の名演奏。クリムゾン時代の「フラクチャー」や「太陽と戦慄」でのファズ暴発の凶暴ベースもスゴイけど、このアルバムでのクリーントーンでの異次元グルーブは唯一無二です。

ASIN:B000003S12

Jeff Berlin 「One of a Kind / Bruford」

バーリン師匠はバカテクでありながらもハーモニー感がある不思議なお方でして、ホールズワースの息継ぎ無し50M超絶バサロ泳法のような壮絶フレーズにも負けない超絶フレーズを併せて展開する一方で、ベースでジャズギターのような美しいテンションコードをさりげなく弾いて曲の雰囲気作りに貢献したり、もちろんブラフォードの変拍子にもばっちり合わせるという素晴らしさ。ベースでギターと同じことやるのではなく、ベースだからこその可能性の探求者、錬金術師っていうのが相応しいかもしれない。

ASIN:B000003S15

Richard Sinclair 「The Rotters' Club / Hatfield and the North」

シンクレア師匠はカンタベリー系JAZZロックを代表するお方で、その「ほのぼの」とした独特の歌声の評価が高いのですが、本当にさりげなく「歌メロに寄り添う」ように爪弾かれるベースも素晴らしいです。ワウでファズな演奏もありますが、そんな過激なことをしてもどこか「飄々としてユーモアのある演奏」なのが師匠独特な感じです。前身のキャラバンでも素晴らしい名演多数あり。

ASIN:B000000I03

Clive Chaman 「Rough & Ready / JEFF BECK

とにかくミドルブーストな音色で、まるで讃岐うどんのようなコシの強さでハネて、ハネまくる、ブラックなベースサウンド。僕がベース弾く上で、激しく影響受けました、コピーしまくりました、アンプのツマミ回して音色も随分と研究しました、もうホント師匠様って感じで尊敬してます。特に6曲目の「New Ways Train Train」は本当に鳥肌もんの名演です。これ以外でもブライアン・オーガーや リンダ・ルイス等でも素晴らしい演奏が聴けます。

ASIN:B0000024XV

David Hungate 「Hydra / Toto

ハンゲイト師匠には、8分弾きの弾き方一つで全体のサウンドが劇的に変わることを教わりました。とかく軽めのジェフ・ポーカロのドラムなのですが、師匠のベースがそこに被さることで、ソリッドで重厚な印象に変わるその様は素晴らしいです。またこのアルバム収録の「99」では、美しく歌うベースソロも聴けます。とにかく音の出と切りのコントロール、屋台骨支える安定感という意味では、師匠かダック・ダン師匠かって具合でこれまた唯一無二だと思います。

ASIN:B0000025HE

 

*1:バグルスとかハワード・ジョーンズとかのエレポップが好きだったので

*2:例:キース・リチャーズとか大嫌いなのよ僕

*3:ファズで過激に歪んだベースにさらに倍、ワウで「うみゃうみゃ」弾くという過激だがメチャクチャカッコいい演奏