日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

その壱:最近の洋楽リスナーのマニアックさの深さ


レコ会社や音楽雑誌なんかよりも洋楽リスナーの方が遥かに先に行っているという、先日のジャンルの話*1の続きです。ちなみに、右記の画像は本文とは無関係ながら最近巷での注目度が向上している気がする「電波人間タックル」です。
http://www.urban.ne.jp/home/ak1go/Kuti01.html


で、本題の「洋楽リスナーのマニアックさ」ですが、これ例えば、輸入盤屋だと「ワルシャワ」のエレクトロニカ*2やインディポップ棚の仕切りが顕著でして。この店では、従来のアーティスト名50音順ではなくて、レーベル名50音順で棚を仕切っている。これは、所属アーティストの音楽的な特長が雑多なメジャーレーベルでは成立しないけど、インディレーベルにはレーベルカラーが統一・顕著なところが多い*3ので成立する仕組み。で、なおかつリスナーもそういう探し方をしているという例だと思う。

warszawa(ワルシャワ) http://www.warszawa.jp/


また、アマゾンの登場と普及はリスナーの探し方に多大な影響を与えていると思う。例えば、購買履歴分析による関連アイテムのリコメンド制度は、店頭では探し難かった「潜在的な類似作品」を探すことを容易にしている。また、リスナーによる「レビュー」制度と「リストマニア」制度は、リスナーが擬似的に「売り場に俺様推薦コーナー」を設けることが可能であり、リスナーの探究心と自分が聴いた音源を紹介して自らで広めて行くインセンティブを高めている。その結果として、イモヅル式にヘビーリスナーが次々育まれているのではないだろうか*4。下記はそのようなヘビーリスナーの例であるが、とにかく物凄い探究心で音源を掘り進み、そしてその探求結果を後続のリスナーに紹介している好例だと思う。

ニックネーム:いちのすけ 氏の公開レビュー
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/cm/member-reviews/-/A1HUA5LQ96AYGB/11/249-1210837-0797114?display=attributed


これらの現象が何を意味するのかは、偽兄弟のid:plagio:20050218#p1 師の「確かに僕らの子供のころはメインストリームというものがあった。それはメディアも今と比較して限定的だったし、娯楽の幅も比較的少なかったから「一般大衆向け」というマーケットが可能だっただけのことだ」という一文と対比すると、何かヒントがありそうだ。


正直、ここ5〜6年ぐらい他人と「共通の音楽の話」で盛り上がるということが、あまりなくて、皆聴いてるものが細分化されすぎていて、昔のアイドル歌謡とかでかろうじて昔話的に話題が盛り上がる程度な、気がする。また、各所のブログを見ていると、イキナリ高校生ぐらいから、昔のクアトロWAVE2階のような雑多さで、カンタベリー系のマニアックなプログレや、ソフトロックやサイケ、米英SSWの渋ドコロ、マニアックなソウルやボサ、ギタポやテクノというCD所有をしている人もいて、これまたビックりする。

当方、もはや古い人なので、爽やかボーダーでギタポ野郎な半面で、ノイズ大好きな暗黒野郎という時点で分裂キャラクターだなと自らを想うのですが、そんなのは別に分裂と思われないぐらいに、もはやジャンルというもので「音楽や人間の属性を分類すること」が困難というか「無意味」になってきているのかもしれない(思い憑きですが)。


そういう雑多さ、即ち混沌に、果たして人間の精神が耐えられるのだろうか?というのが素朴な疑問。反動で「単純で一元的な何か」を希求したりすることはないのだろうか?それこそ政局や状況が混沌とすると必ず台頭するネオナチ:極右勢力みたいな。それとも、そういう団体行動すら面倒だから、別の方法で何か解消するのだろうか、或いは解消しないままに溜め込んで爆発するのだろうか?

その一方で、テレビや雑誌等のマスメディアはどんどんつまらなくなってきている気がする。正直、雑誌は本当に内容が希薄で面白くない。ブログ読んでる方が遥かに面白い。またブログの普及が、市民記者、社内記者という概念を生み出し、新しいタイプの情報の流通量とプレゼンスが著しく増大しているのも事実だろう。


これを「ゴール無き欲望のシステムの中で絶えず潜在的な欲望が発見・刺激=消費されることで成立する現代の資本主義文明」の仕業と俯瞰的に状況を単純化して捉えてみても、別段何も状況は変わらない気がする。かといって、人間がニュータイプ化して、荘子が説く「混沌」を「混沌」のままとして、受容する人達が現れた訳でもなさそうだし、何かすっきりしない感じだけが残るなぁ (困)*5
 

*1:http://d.hatena.ne.jp/cliche/20050213#p1

*2:http://d.hatena.ne.jp/keyword/ELECTRONICA の説明は面白い

*3:エレクトロニカ系なら例えば、City Center Office,Morr,Karaokekalkとか

*4:もちろんアマゾン輸入盤の価格の安さ+全国一律で入手可能な要因が、それに拍車をかけている筈だ

*5:コレは顔文字です