日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

その弐:渋谷系とはなんだったのか

そもそもはバブル期の80年代後半、渋谷に、タワーレコード、WAVE、HMVといった外資系の大型輸入CDショップが大挙進出してきたことから始まる。当時はCDの普及率が高まり、過去の名盤と新しい音楽を並列に大量に聴くことが可能になってきたころ。それによって、高感度なセンスと膨大な音楽知識を持つリスナーが急増してきたという背景もあり、ショップは彼らの肥えた耳にアピールする、日本盤では発売されていないようなボサノヴァ、ジャズ、60〜70年代ポップスなどの「洒落た音源」をパワープッシュ。これにより、一般音楽ファン層にも、知られざる名盤を入手する機会が増えた。
このようにして、TVやラジオといったメディアによる流行発信ではなく、渋谷というエリアでかたちづくられ、広がっていった音楽、これが「渋谷系」の源流となったといって良いだろう。

『OCNスペシャル: 渋谷系とはなんだったのか?』より引用
http://ocnspecial.blogzine.jp/blog/2005/02/post.html

小西君のレコード棚は急速に膨張を続けていたが、それはこのとき集まったすべての人(ファンも含め)がこの後、多かれ少なかれ、同じ運命を真似ることになったのだと思う。そういったニーズに応えて、大規模レコード店が次々とオープンしたのだ。80年代末、それを促進する大規模店は六本木WAVEと渋谷タワー、シスコだけであったが、その後、渋谷WAVEを皮切りにとんでもない量販店の増殖を生んだ。

DJバーに集まったマニア&候補生500人の諸君が、その後マニアの時代90年代に買うレコード&CDの枚数は、低く見積もっても10年間で1人あたり平均1000枚、ヘタすると2000枚のアナログやCDを買っていたという規模に達すると思う。500人集まっていたから、50万枚〜100万枚がここに集まったメンバーによってその10年に買われたのだと思う。(これほんと)

ほぼ日刊イトイ新聞 - 総武線猿紀行』より引用
http://www.1101.com/saeki/archive/2001-06-21.html


当方が考える「渋谷系とは何だったのか」は*1、「編集の市民化」ではないか、と思うのだ。渋谷系の後半から「H」あたりの雑誌で、「マイブーム」という言葉がよく上るようになったが、そこで紹介される「マイブーム」のポイントは、音楽や映画や書籍だったり、ファッションやフードやショップだったり、雑貨やオモチャであったり、マニアックな場所や人物であったりと、とにかく、ジャンルとか年代とか何だとかを全て横断して「自分のテーマでセレクトすること」であったのだと思う。そして、そうした編集能力を育んだのが、上記のような80年代後半からの状況だったのではないか、と思うのだ。

そして、小山田君、カジ君、嶺川さん、緒川さん、そして「MJ」師等の「マイブーム」は、特に「ボクやアタシならでは」という編集性が高くとても面白かった。そして、この流れが今の「個人ブログのオモシロさ」を育む要因にも、なっていたのではないだろうか、とボクは今想うのだ。「編集能力の市民化」つまり「普通の人のマイブーム」が今とにかくおもしろい、ということなのだ。

ところで確かにこうした流れの更に先で、ブログによる「ニュース記者の市民化」や「企業広報の個人化」が今確実に勃興しつつあるが、だからといって『国民総Blogger化』なんて、状況にはなりはしない、だろうというのが片方である。相変わらず「ブログってそもそも何?」とか「トラバとリンク何が違うの」という疑問反論オブジェクションはIT企業で働く人間の中ですら、結構普通に語られるているのであり「いわんやオジサン・オバサン以上をや」である。

この辺りは、より冷静に考える必要があるのだが、ひとまずここまでで小休止


【追記1】

思い起こせば、ボクが自分のWebページ*2を作り始めたのが95年の半ば位だから、まるまる10年近くの時が流れている訳だ。当時95年頃は、まさに「個人ホームページで情報発信」の黎明期みたいな感じだったのだけど、マイブームの流れと個人がネットで情報発信の流れは完全にシンクロしているから、10年という時の流れが育んだものは相当な「何か」がある筈だ。だって当時14歳だった中学生の少女が、即ち今や24歳のOLってことなのだから・・・


【追記2】

ネットは新聞を殺すのかblog 「EPIC 2014」
http://kusanone.exblog.jp/1667111/

「EPICは、消費行動、趣味、属性情報、人間関係などをベースに、各ユーザー向けにカスタマイズされたコンテンツを作成する。新世代のフリーランス編集者が次々と生まれ、人々はEPICのコンテンツを選別し優先順位をつけるという能力を売るようになる。」

最近のアマゾン米国の新機能開発状況やグーグルの各種β版機能をみていると、編集のシステム化と市民化の流れは確実に進んでいるように思えるので、上記の記事はアナガチ夢だけで終わるとは言い切れない、気がする。
 

*1:背景事情に関する認識は http://d.hatena.ne.jp/cliche/20040424

*2: the world of flower and stone という名前でした