日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

シャロット・モデルと下北沢再開発


アメリカでは行政からのトップダウンによるまちづくりはすでに崩壊し、シャロット・モデルという市民による、市民のための街づくりが注目されているそうだ。つまり、大量生産的で画一的な郊外開発への反省から、ニューアーバニズムという新しい郊外開発手法(思想)が生まれてきており、このニューアーバニズムを実現するために考え出されたのがシャロット・モデルという考え方らしい。その特長は下記の5つの要素から成立するらしい。

  1. ウォーカビリティ(歩きやすさ)
  2. ミックスドユーズ
  3. 多様な居住形態の提供
  4. 高密度・コンパクト設計
  5. 地域性が感じられるまちなみの形成

参考 Monthly Urban Dynamics Review NO.69 Mar.2003
http://www.udit.co.jp/ronsetsu/69/6902.htm


で、実は上記の全ての特長が、現在の下北沢の街の構造にドンピシャ当て嵌まるのである。が、翻るに世田谷区が進めようとしている再開発計画は、街の真ん中に幹線道路を通し、中心街に高層ビルを立てるという、まさに時代に逆行するというか、模範としてきたアメリカでの失敗から学ぶ気配すらない計画だったりする。さすがというか、ヤレヤレというか、全ての河川にコンクリで蓋をし、その上にモデルルームのようにペナペナで人工的な小川を造園して「文化的」とする世田谷区のセンスには戦慄を覚える。

現在の下北沢が有する価値を端的に説明しているのが下記に引用した文章であるが、旧社会主義国家の計画経済のように、或いはアメリカのサバービア(郊外化)計画のように、狭量かつ直線的なロゴスのみで社会・経済の管理を推し進めた結果何が起きたかは、歴史が顕著に証明しているのに、相変わらず愚行が繰り返されようとしている、のであった。大店法改正以降荒廃した中心市街地活性化が課題となっている地方都市で目下「リノベーション」という思想と実践が、市民側から勃興し始めている現場に立ち合うにつれ、下北沢再開発の逆行具合がますます情けなく写る・・・

高円寺、吉祥寺、下北沢といった街には、車があまり通らない。車の多い幹線道路は街の中心からはずれている。よって道は概して狭く、あまり都市計画されていないために、街路が入り組んでいるので、ラビリンス的な魅力を生み出している。こういう魅力は郊外のロードサイド空間には全くないものだ。

<中略>

高円寺、吉祥寺、下北沢といった街には、ロック少年もいれば、サラリーマンもいる。商店街のおばあちゃんもいれば、アーチストもいる。アジア好きもいればアメリカ好きもいる。金持ちもいれば貧乏な人もいる。年齢、職業、価値観、生き方などが多様である。こうした異質な物、人の混在した状況は、一億総中流の均質な家庭や郊外化した地域、画一的な教育の中で育った若者にとっては非常に新鮮に見えるし、それだけでなく、同調圧力の強い環境の中で感じていたストレスを解消する効果がある。

『マイホームレス・チャイルドにとっての都市』 from カルチャースタディーズ
http://www.culturestudies.com/city/city01.html