日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

KEITH / OUT OF CRANK asin:B00005FGQF


冬が近づくと、フラワーがサンシャインで、シュガーフルなアップルパイがソフトクリーミーにキャンディーで、赤と緑の華やかなコントラストにサンタクロースも暖炉でホクホクな、職業作家によるバブルガムでホープフルなポップスが聴きたくなる、そんな私なのです。という訳で、今日はソフトロックの魔術師的プロデューサー:ジェリー・ロス*1が1967年に残した名作 KEITH の "OUT OF CRANK" を聴く訳です。

而してこのアルバム、まずはジェリー・ロス本人作の「CANDY CANDY」と「EASY AS PIE」の悶絶必殺ドリーミーなパッパーコーラスと、反重力装置のようにフワフワで甘ーいホイップクリーム的なメロディで、完全に脳味噌=蕩けます。その他の曲も、この2曲には敵いませんが、かなりレベル高い曲揃いで、中にはフィリーソウルの代名詞:ケニー・ギャンブルとの共作*2なんてのもあり、米国東海岸特有の上品で室内楽的な箱庭マジカルPOPワンダーランドが繰り広げられています。そして最後には、スペクター作の「BE MY GIRL」で、音の壁室内楽的な和やかアレンジでホンワカ纏めて締めくくり。嗚呼、なんてドリーミーで至福な音楽なのでしょう(放心)


ところで、職業ポップス作家が作り出すティーン向けのマジカル・ポップスが一番輝いていた時代、それがロック革命やヒッピー旋風が吹き荒れる境い目の1960年代中頃、なんじゃないかと思うのです。60年代後半に燃え盛り69年に頂点を向かえるロックのメッセージ性とか反体制だとかの装飾の反動で、或いは70年代前半のフォーク/ S.S.W 系内省サウンドの反動で、ポップスの世界から失われたものの大きさを、ジェリー・ロスの60年代半ばの作品群を聴くと痛切する訳なのです*3

特にそう感じるの理由は、ジェリー・ロスのサウンド・プロダクションには、フィリー的な豪華流麗なオーケストレーション&コーラスなんかも見え隠れしていて*4、他の職業ポップス作家とは一味違うゴージャスさに稀有な魅力があるから、なのかもしれません。また、ジャズ方面にも接点があり、同時期に手がけていた「Spanky & Our Gang」では、ブロッサム・ディアリーとの共演等で有名なボブ・ドロウとも組んだりしていて、一味違うボーカル・ハーモニーを組み上げていたことも、そうした印象に影響しているのかも、しれません。
 

*1:参考サイト http://www.circustown.net/ct/add/jerry_ross/index.html

*2:フィリーも甘茶ソウルもジェリー・ロスが触媒だったみたい、知らなかった!! http://www.circustown.net/ct/add/jerry_ross/ross_2_gamble_thom.html

*3:ちなみに私は、サイケ/ガレージ系もアシッドフォークも70年代フォーク/ S.S.Wも大好きなこと、明記しておきます

*4:実際、ジェリー・ロスは「ボクのMFSB」と表していたスタッフ/ミュージシャンで固めていたりしたらしい