日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

Ghost / BankART Studio NYK


今年2月のライブ*1に続き、BankARTプロジェクトの一環で10月09日に行われた「Ghost」のライブに行ってきました。今回も前回同様、ライティングを「OVERHEADS」が手掛けていたのですが、前回との大きな違いは、多分PAシステムがなかったこと*2。つまり、モトは倉庫であった会場の「BankART Studio NYK」の箱鳴りと残響音がPAシステムということ、なのではないかと推察。そして、今回のライブが特に「新鮮」だったのは、基本的に2時間近い即興演奏で構成されるにも関わらず、メンバーは互いの姿を見ることができない配置になっていたこと。


会場の配置を概説すると、まずステージに相当するものは無く、会場の左右にはカーテンで仕切られたエリアがあり、どうやらそこにメンバーが一人ずつ配置されていたようで、さながら観客が「ぐるり」とメンバーに囲まれる状態で演奏を聴く、まさに文字通りの全方位サラウンド状態、だったのです。しかも、会場のドア(基本唯一の出入り口)はライブ開演とともに重い鉄の扉が閉ざされ「まさに完全無欠な密室状態」で、そのモト倉庫な風景が織り成す暗闇と高い天井と固い壁がもたらす圧倒的な残響音*3

このような配置で、基本的に真っ暗な空間を「OVERHEADS」のライティングが仄かに幻影的な光と抽象を紡ぐような状況であるが故、「Ghost」のメンバーは演奏中互いの姿を見ることができない*4。それゆえ、各人の出す「音」だけを頼りに、2時間の即興演奏を進めていかなければならない。以上が、このライブの「新鮮」さの屋台骨である。


そして、実際の演奏は、多分大まかな即興の筋書き:合図=誰かが「展開を変えるための主題/モチーフ」を切り出したら、それに従う、があったのだとは推察するのだが、それにしても、各人が文字通り「音で会話を繰り広げる」素晴らしい即興演奏だったのは間違いがない。栗原さんがフィードバックギターでドローンを奏でれば、それに呼応してサックスが微分差音的なドローンを展開し「音のうねり」を形成したり、或いはウッドベースボーイングでドローンを下支えしたり、或いは別の波動を形成したり、云々。本当に素晴らしいライブを体感することができました。


PAシステムがなかった故か「圧倒的な音量」で恍惚ルのは不可だったかもしれない。或いは、即興演奏故に解りやすい「メロディ」がなかったので恍惚ルのが困難だったかもしれない。でもこういう感想を持つのは、きっと「普段、圧倒的で解りやすい稚拙なモノに身を委ねて、阿呆で痴呆に暮らしている人間」なのだろうな多分(毒)。


*1:参照 http://d.hatena.ne.jp/cliche/20060206/p1

*2:電子楽器には各々モニターを兼ねたアンプがあるのみ?

*3:ピアノの打音が完全に消失するまで15秒ほどあった

*4:当然ながら、アイコンタクトも不可能でしょう