日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

攻殻機動隊 Solid State Society 観ました(一部ネタばれ)


今回の「Solid State Society」は、現在「目の前にある現実的問題」が 2034年 という未来に、どのような状況/現象に帰結しているか、というシミュレーション的な側面をもつ、そんな作品でした。で、目の前にある現実的問題としてフォーカスされていたのが、元祖フリーター/パラサイト・シングル世代とみなされる、現在30代後半辺りの人々が(ってまさに僕の年代だ・・)、家庭を持たず/子を設けずに推移し、独り身のまま老人介護を受けるようになる状況。


身体は衰弱し、寝たきりの状況ではあるが、電脳化された脳髄が希求する、生物としての「種の保存/継承願望」という無意識と、個と世界のネットワーク化/メディア化の帰結としての「肥大化した自意識/全能感(=鼻穿りながら手軽に天下国家に正義の使者面して物申せる、情報発信メディアのカジュアル化の帰結)」が、「介護ネット」という個々の寝たきり老人の電脳をネットワーク化する「ハブ電脳」を踏み台に、その脳髄の内側に滞留していたそれらの意識と無意識が集積し、集合的無意識もしくは意思となって機能する、そんな状況がもたらす「事件」が描かれている。


これは、このシリーズの基底テーマである「STAND ALONE COMPLEX」という、近代以降の理想的な人間像であった「個性を希求する個々の人間」がいとも簡単に「並列化」し、個性を捨て集合的/平明な【依り代】に帰依してゆくことの分析のバリエーションであることには相違ないと思うのだが、並列化の所産として集合的無意識がネット上に自律的に形成されてゆく=電脳化の果てでネットが脳と同じ構造となってゆくのではないか、という仮説が面白かった。というか、久々に「集合的無意識」とか「リゾーム」なんて80年代的なキーワードを耳にして、正直びっくりしましたのだ。


【補足】 リゾームで思い出したのだけど、そいえばこの作品には「極右のアイコン」のような政治家が出てきて、一元的/Tree構造的な論理を開陳する。しかし、この作品では、リゾームのような中心を持たない不定形な概念/論理と、昨今世間を賑わせる某都知事のような極右政治家の論理を対比/対立させるのではなく、そうしたTree構造的論理=極右政治家をリゾーム的なハブ電脳+集合的無意識が「利用/寄生する」という構図だったのも興味深かった。


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society [DVD]

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