日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

新譜100枚聴き倒れ〜第60回 Lucio Mantel の巻


Lucio Mantel / Nictografo

こちらもアルゼンチン産のSSWなのですが、冷たい風が吹き荒ぶ「フォルクローレ的寂寥の風景」と、大西洋と赤道を隔てた反対側の音である「ポーティスヘッド」を喚起させるような「霧のような翳」が相俟って出来たような不思議な一枚、なのであります。とにかくまず、唯一絶対的な「声」が素晴らしいのですが、ラプラタ的な土着メロディの起伏/抑揚と、ダブでもロックでもジャズでもない「土着リズム」との「不思議なミクスチャー」がその声と掛け合わさることで、非常に独特な「エモイワレヌ」雰囲気を醸し出すのであります。日が沈み闇が訪れる前の「鮮血と藍の境目」の凪的な感じというか、光が闇に沈む止揚的な瞬間に潜む「中二階」感というか、砂時計の中の砂がジワジワ崩れてゆくような、生と死と、闇と光と、自と他と、その他諸々の二項対立が崩れてゆくその隙間にあるような、そんな不思議な一枚なのでありました(という意味でも、南米マジックリアリズム的な音と言ってもいいのかもしれない)。

MySpaceで音聴けます http://www.myspace.com/luciomantel