日々常套句

2003年からホソボソと「退屈に関する思索」を亀の歩みで行う退屈研究ブログ(自称)です

800円だったから買ってみた:話題盤聞き比べ


近未来の神話(期間限定)

近未来の神話(期間限定)

 
フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー

フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー


前者(Klaxons)と後者(Arctic monkeys)は、それぞれ今年話題のアーティストで、英国音楽の新しい潮流の担い手扱いを受けているらしいので名前ぐらいは知っていて、数曲は試聴したこともあったのですが、中古CD屋に800円で並んでいたので、モノは試しで購入、聞き比べてみました。

で、印象を端的に述べると前者は「キャバクラ的な店が押し込められた古い雑居ビルの一室、そこは年がら年中店子が変わり、そのたびにペンキの色が変わるよな内装レベルの簡単な、でもインパクト大な変化が施される、そんな一室に新たに入ってきた店子」という按配で、薄っぺらい表面上の改装が施されてはいるものの、建物や部屋の基本構造には一切変化がない、そんな感じの音でした。

なんか、2曲目とかEMFへのオマージュを感じましたが、明らかに本家の方が音の隙間の設計含め盛り上げどころのツボを押さえている感じで「なんだよEMFの方が新しく聞こえるよ」とか不遜なことを感じてしまいました。が、よ〜く考えてみるとこの「胡散臭い」マガイモノ感こそがこのバンド/この音楽の肝なのかもしれない、なとも思えてきたので、まぁ結論としては「僕は好きじゃない」という、それ以上でもそれ以下でもない感想にしかなりませんでした。


他方で、後者はというと、その昔に試聴機で聞いた際の印象は「ベースがGang of Fourじゃん」とか「Wonder Stuffみたいなベースじゃん」という感じで「ふーん」とか思いつつ、そのまま最近まで忘れていました。が、改めて今回スピーカー経由でちゃんと聴いてみたら、前者の「古い雑居ビルのペンキ塗り替え改装感」とは異なるというか、土台から取り壊して「最新の構造設計手法と建材を用い、全く新しいビルに建替えましたけど、外装は周囲と溶け込むように配慮して80年代風味でデザインしました」というか、

多分楽譜におこして表面上の音符の配置を眺めれば特に目新しさはないかもしれない感じですが、むしろ楽譜では表現できない要素、即ち、はじめからDAWの波形表示ウインドウベースで作曲が進められているかのような音の定位のデザインというか、そうした音の定位のデザインが無ければ成り立たないような「音の隙間と絡まりあいの妙」こそが肝というか、だったりするのでは、と感じたのでありました。そういう意味ではこちらの方が「新世代の萌芽」感を強く感じ、面白くも楽しくも感じたのでした。


という感じでなんだか、ある意味両極端な二者ですが、800円×2個=1600円でここまで楽しめたのでありがとう御座いますという感じです。ということで、今のうちにブクオフとかで売れば300円×2個=600円ぐらいで買い取ってくれるかもなので、転売でもしますかね。